「食べること」は、毎日繰り返される何気ない行為ですが、
実はそこには、いのち・自然・人とのつながりが詰まっています。
近年、子どもの偏食や食品ロス、食べ物の“ありがたみ”の欠如が課題となる中で、
あらためて注目されているのが「食育」という考え方。
そして、その食育の根幹を支えているのが「農業」です。
1. そもそも「食育」とは?
「食育」とは、食に関する知識と、選ぶ力・感謝する心を育てる教育です。
2005年に「食育基本法」が施行され、全国の学校・家庭・地域で取り組みが進められてきました。
食育の目的はただ栄養バランスを教えることではなく、
- 食べ物の由来を知る
- 作ってくれる人への感謝を持つ
- 自ら選び、考え、行動できるようになる
といった“人間力”を育てることにもつながっています。
2. 食育と農業が密接につながる理由
食育を実践する上で、農業は「原点」です。
なぜなら、どんな食べ物も農業という営みなくしては存在しないからです。
以下のような点で、農業と食育は強く結びついています。
■ 生産現場を知ることで、食のリアリティが育つ
スーパーに並ぶ野菜の裏には、種をまき、育て、収穫する人の努力があります。
実際に畑に触れることで、「食べること=誰かの労力の上にある」と実感できます。
■ 季節や自然の循環を学べる
旬の野菜を知る、天候と成長の関係を知るなど、農業体験を通して、
自然との共生という感覚を子どもに伝えることができます。
■ 食べ残しへの意識が変わる
自分で収穫した野菜は、多少形が悪くても「もったいない」と感じます。
食品ロス削減や命への感謝の気持ちは、農業体験があってこそ深まるのです。
3. 子どもと食育をつなぐ農業体験の実例
以下は、各地で実践されている食育 × 農業の取り組み例です。
● 学校菜園
校庭の一角に畑をつくり、野菜を育てる。給食に活用するケースも。
● 地元農家との連携
農家が講師として学校へ出張授業。収穫体験や土づくり体験を実施。
● 家庭菜園プロジェクト
プランターで育てた野菜を家族で調理する「親子参加型」の活動。
● 食育キャンプ・農泊体験
週末や長期休みに農家民泊などで「畑から食卓まで」を体験する。
4. 食育が育てるのは“心”の豊かさ
食育は、単なる知識の教育ではありません。
農業体験を通して、子どもたちはこんな力を育てます。
- 感謝の気持ち(食べ物や作ってくれた人への)
- 忍耐力と観察力(野菜が育つまでの過程を見守る)
- 主体性と選択力(何を育て、どう食べるかを考える)
これらは、将来どんな職業についても役に立つ「生きる力」です。
5. 私たち大人にできること
子どもにとっての“食の先生”は、必ずしも専門家ではありません。
家庭でのちょっとした会話や、週末の畑仕事、買い物時の声がけでも十分です。
たとえば:
- 「この野菜はどこで採れたのかな?」
- 「今日は旬のものを食べようか」
- 「形がちょっと悪いけど、美味しいんだよ」
そんなひと言が、子どもにとっては**「気づきの種」**になります。
まとめ|食べることは“命をいただく”こと
農業と食育は、切っても切れない関係にあります。
子どもたちに「食の大切さ」を伝えるには、
“つくる現場”と“食べる行為”をつなぐ経験が不可欠です。
これからの時代を生きる子どもたちに、
ただお腹を満たすだけでなく、心も育つ食との向き合い方を伝えていきましょう。
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