台風・豪雨・猛暑…異常気象とどう向き合うか

近年、台風の大型化や豪雨の頻発、記録的猛暑など、異常気象が日常化しています。
これらは農業にとって大きなリスクであり、作物の生育不良・品質低下・収穫ロスを引き起こす深刻な問題です。

今回は、気候変動の現状と、農業者ができる「備え」と「対応」について考えます。


1. 異常気象が農業に与える影響とは?

■ 台風・強風

  • ビニールハウスや設備の倒壊
  • 作物の倒伏・落果
  • 塩害(海に近い地域)

■ 集中豪雨・長雨

  • 根腐れや病害の発生
  • 土壌の流出
  • 作業遅延(畝立て・収穫が困難に)

■ 猛暑・高温

  • 花芽や実の着きが悪くなる
  • 果実のひび割れ・変色
  • ハウス内の高温障害

これらのリスクは、収量・品質の低下だけでなく、収入の不安定化や経営悪化にもつながります。


2. 気候変動は“例外”ではなく“前提”に

昔は「たまたま今年は台風が多い」などと捉えられていましたが、
今や異常気象は一時的なものではなく、恒常的な現象になっています。

つまり、「毎年なにかしらの気象災害が起こるもの」と考えて、
最初からリスク込みで作付け計画・経営戦略を立てる必要があるのです。


3. 異常気象への“備え”と“工夫”

① 作型の見直し・品種選定

  • 高温や湿害に強い耐性品種を選ぶ
  • 台風シーズンを避けた栽培時期にずらす(早植え・遅植え)
  • ハウス内の自動温度管理装置などの導入

② 圃場整備・排水対策

  • 水はけを良くする暗渠排水の整備
  • 土壌流出を防ぐマルチや草生栽培の活用
  • 風よけネットや補強材でのハウス強化

③ 保険・リスク分散

  • 農業共済や収入保険の加入
  • 複数品目の栽培によるリスク分散
  • 市場出荷と直販など販路の多様化

④ 情報の早期キャッチ

  • 気象アプリや農業気象サービスの活用
  • 地域の農業団体・JAとの情報連携
  • ドローンやIoTを活用した圃場モニタリング

4. 地域ぐるみの対応も重要に

個人レベルでできることには限界があります。
近年では、地域全体での防災訓練や、農業用ハウスの共同補強事業など、
行政・JA・農家が連携した取り組みも増えています。

また、災害時の共助ネットワーク復旧支援体制の整備も、
今後ますます重要になるでしょう。


5. 「異常気象=ピンチ」は「変化のきっかけ」でもある

異常気象は確かに大きな脅威ですが、
同時に、これまでの農業のあり方を見直すきっかけにもなります。

  • 自然任せにせず、科学的データや技術を活用する
  • 消費者に直接伝えるなど、販路の主導権を握る
  • 生産だけでなく、地域資源の活用や観光との融合を考える

気候が変わるなら、農業も変わらなければなりません。
変化に対応できる力こそ、これからの農業の価値なのです。


まとめ|“気候に強い農業”を目指して

異常気象は待ってくれません。備えは「いつか」ではなく「今」から。
気候の変化を悲観するだけでなく、それを前提にした新しい農業の形を模索していきましょう。自然と共に生きるという覚悟と、科学的な視点を両立させながら、
私たちは次世代に誇れる農業をつくっていけるはずです。